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「オヌシの決意、しかと聞き届けた。ならば、先ずは泣き止め。話はそれからだ」
赤くなっている圭の鼻をムギュッと摘み、ニッと笑いかける。
圭は「イダイ!」と俺の手を払い除け、コートの袖でゴシゴシと目元を擦ると、ポスッと抱き着いてきた。
俺の背中に腕を回し、ギューッと抱き締めてくる。
抱き締め返そうとした瞬間に離れるから肩透かしだ。
何なんだコイツは。
行き場を失った俺の手を取りガッチリと繋ぎ、前後にブンブン振りながら歩き出した圭。
「おい圭、幼稚園児じゃないんだから」
「いーじゃん! 歌も歌っちゃう!?」
ニコニコしながらチューリップを歌い出した圭を見下ろしながら、コイツには敵わないと苦笑する。
俺達の他には誰も居ない、宅地からは離れている小道。
調子っぱずれのチューリップが近所迷惑にならなくて何よりだ。
な? ……俺の大切な、歩くデンジャラスゾーンのぶっ飛び姫。
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