Step 10

11/14
前へ
/205ページ
次へ
「オヌシの決意、しかと聞き届けた。ならば、先ずは泣き止め。話はそれからだ」 赤くなっている圭の鼻をムギュッと摘み、ニッと笑いかける。 圭は「イダイ!」と俺の手を払い除け、コートの袖でゴシゴシと目元を擦ると、ポスッと抱き着いてきた。 俺の背中に腕を回し、ギューッと抱き締めてくる。 抱き締め返そうとした瞬間に離れるから肩透かしだ。 何なんだコイツは。 行き場を失った俺の手を取りガッチリと繋ぎ、前後にブンブン振りながら歩き出した圭。 「おい圭、幼稚園児じゃないんだから」 「いーじゃん! 歌も歌っちゃう!?」 ニコニコしながらチューリップを歌い出した圭を見下ろしながら、コイツには敵わないと苦笑する。 俺達の他には誰も居ない、宅地からは離れている小道。 調子っぱずれのチューリップが近所迷惑にならなくて何よりだ。 な? ……俺の大切な、歩くデンジャラスゾーンのぶっ飛び姫。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加