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「ふぅ……。ここまで来れば大丈夫……だよね……はぁ~……」
桜の木に背中を預け、ズルズルと座り込む彼。
こちらの存在には気付いていないらしく、ホッと安堵の息を漏らした。
おい、コレは俺の木だ。
名前を書いてある訳じゃねーけど、俺専用。
他にもあんのに何でここに来っかな。
同じ木を背に座った反対側。
穏やかな時間をブチ壊されたのと、お気に入りの桜の木を使われているのとで少し不機嫌だ。
そんな俺の気も知らず、独り言を漏らす彼。
俺は、聞くともなしにその独り言を聞かされる羽目になった。
「毎日毎日何なんだよ……も……疲れた……」
肩越しに後ろを窺うと、彼は一人ごちながら、溜め息と共に視線を上に向けた。
「眩し……」
桜舞い散るまだ少し肌寒さの残る4月半ば、彼、倉木圭(クラキ・ケイ)は、学園私有地の裏山で始まったばかりの学園生活に頭を痛めているらしかった。
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