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「いや。俺、殆ど教室には居ないから」
ま、少なくともこれで俺の名前と顔は覚えただろ?
初対面? の挨拶を済ませた俺は、用は済んだとばかりに校門へと足を向ける。
「……教室はそっちじゃないよ」
まだ校舎の位置を把握しておらず間違えたのかと思ったらしく、倉木は、俺の背中にそう声を掛けたけど。
「ん、分かってる。こっちでいいんだ。」
そう返事をし、そのまま校門へと歩く。
道を曲がる時に微かに首を傾け様子を見ると、倉木は腕時計に視線を落としていた。
授業はもう余裕で始まってる時間だっつの。
倉木はまた溜め息を漏らす仕草をした後、重い足取りをノロノロと校舎へと向ける。
不登校にでもなりそうな後ろ姿。
「本気で顔色悪いんだから保健室にでも隠れちまえばいいのに……っとに要領悪いわ。御愁傷様」
ポツリと、思わずそんな言葉が零れ落ちた。
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