A.彩

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「名前が無いということは使い捨てかな。君、自分がやらなければいけないことは頭に浮かんでいるか?」 「いや全く」 不機嫌そうにアヤは目を細め、うーんと唸る。 唸りたいのはこっちの方だ。 「てか、使い捨てってどういう意味っすか」 「端的に言えば特攻隊、お国の為に犠牲になってくれる人だな」 「はあ!?」 突拍子も無いことを言われ、思わず声を荒げる。 アヤは迷惑そうに俺を見やり、溜め息を吐いた。 いい加減俺の相手に飽きてきたのだろうか、それかアヤにとっては当たり前の事を説明させられ続けているからか。 恐らく両方だ。 「俺に死ねって言うのか」 「死なせやせんわ、犠牲にはなってもらうだけだ」 「だからその犠牲って」 「お前、外で殴られた経験は?瓶とかで」 めんどくさそうに質問するアヤ。 そんな経験無い、言いかけてまた口を半開きで止める。 そして、小さく別の言葉を吐き出した。 「………ある…かも」 「ふん」 薄くにやりと笑うアヤが、少し悪魔に見える。 確かに俺は殴られた…?ような。 記憶の中の景色がぼんやりし過ぎていて、あまり自信が無い。
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