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絶えず耳に入り込む、鈍い音。
ごす、ごす、ごす。
耳障りなその音に耐えきれず、蓋をしようと両の掌を両の耳に被せる。
すかさず遮音なんてさせまいと、頭部に走る激痛。
がん、がん、ぴき。
さっきのとは比べ物にならないくらい、耳障りな音。
がしゃんと鼓膜をつんざく嫌な音。
割れた酒瓶の破片が視界いっぱいに降り注ぎ、きらきら輝く狂喜を振りかざしてくる。
咄嗟に顔を背けて目を瞑り、耳にやっていた手を眼前に広げた。
腕と手、満遍なく突き刺さる痛み。
防ぎきれていない破片が顔に無数の痛みを走らせる。
オレは一体何をしてる?
ここはどこだ?
身体中が痛い。
ひりひり、じりじり、ずきずき。
仰向けになった自身の身体は、床の冷たさを直に背中から感じさせた。
でも、熱い。
身体は痛みに重なって熱を孕む。
どこだ、どこだここは?
ぼやける視界に赤が、嫌に鮮やかな赤が花を咲かせる。
ぐさぐさと突き刺さるガラスの隙間から、赤色の液体が溢れ落ちていく。
痛い、痛い、痛い、痛い。
何が起きてる?
ここはどこ?
俺はだれ?
ぼんやりと霞む視界の中、微かに見えた人影。
俺を見下ろしてる。
電気の明かりが逆光になって、薄暗いシルエットのようになっている。
誰だ、誰だお前は、誰だ。
痛みに遠退く視界。
ここは酷く残酷で、でも目が覚めたばかりの俺に、普通なんてわかる筈も無くて。
「いた、い」
やっと出てきた初めての言葉は酷く女々しい声質で、でも低く、震えていた。
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