A.彩

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「起きなさいな、大丈夫?」 薄ぼんやりとした視界の中、鈴の音のような優しく儚い少女の声が鼓膜を震わせた。 ぐらぐらする頭で呻きながら目を開き、声の主を探す。 「また新しい子、でもなんだかいつもと趣が違うわね…」 ぼやける視界、しかし目は開けているのに真っ暗だ。 どうしたことだろう、さっきの硝子の破片でも目に入って失明でもしたんだろうか。 何も無い、何も見えない、唯一解るのは俺は仰向けに寝ているであろうということ。 まだ若干寝ぼけている頭では、緊張感も何も未だ湧いてこない。 「おい、男、名を名乗れ」 ひょこっと。 突然視界の端から黒髪おかっぱの少女が顔を出した。 え、と五秒程間を空けて、俺は反射的にうわあと悲鳴を上げて飛び起きた。 結構近付いて俺の顔を覗き込んでいた少女は盛大に俺から頭突きを食らって「ぎゃっ」と予想外の悲鳴を上げた。 俺は上半身だけ起こして座り込み、猛烈に痛むおでこを右手で押さえて痛みに耐える。 「ってー…!」 「ってーは此方の台詞だ馬鹿者!いきなり何をする!!」 今度は後頭部に衝撃。 すぱーんと良い音を立てて鈍痛が走る。 ぬうっと小さく呻いて視界の右側を見やる、と。 「…おうっ?」 えらい美少女が其処に居た。 黒い着物に紅い帯を巻いた、黒髪おかっぱの美少女。 歳は14~5歳だろうか、涙目になりながら白く華奢な細っこい手をおでこに当て、じとりと俺を睨み見てくる。
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