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「それじゃあ青年、私の質問にも答えてもらおうか」
じと、と俺を上目に睨む少女の紅い目。
透き通っていてすごく綺麗だ。
「…どうぞ」
「名は」
そりゃあ、と。
すぐに答えようとして、しかし間が空いた。
それどころか一向に俺の半開きの口は言葉を紡いでくれそうにない。
「…っ……」
「言えんのか？」
「いや…」
言おう、言いたいのは山々なんだが、有り得るのだろうか。
絶対何か言われそうだ、馬鹿じゃないのか、とか。
しかし、言わざるを得ない状況なので仕方がない、場を微妙な空気に変える魔法の呪文、せーの。
「…わからない。」
「成る程」
いやにすんなり呑み込んでくれた。
拍子抜けして、塩らしくなっていたのが阿呆らしくなる。
少女はこれまた当然といった様子で状況を把握してくれた。
普通に考えて自分の名前が解らないなんて論外だろ、人として。
なのに、コイツは。
「一先ず私の名前から。私は彩、アヤと呼べ」
「アヤ…」
困惑しながら少女の名前を小さく反芻する。
和服に似合う良い響きの名前だな、と思った。
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