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風にそよぐ、さらさらな黒髪。
前髪から覗く、色素の薄い瞳を被せるような長い睫毛。
声は驚くほど……冷たい。
瞳も、何を映しているのかも分からない。
「……し…のぐ?」
擦れそうなあたしの声。
自分の名前を呼ばれたから驚いたのか、それとも…あたしの声に驚いたのか。
瞳には、やっぱり何も映し出してない。
「……輝流、どいて」
「え?…うわっ」
輝流を押し退け、あたしの前に屈む。
「はへっ?;」
整ってないあたしの髪を手でそっとあたしの耳にかける。
「南海―――」
無色だった彼の表情は、少しずつ色を取り戻していった。
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