旅立つあたし

5/7
前へ
/331ページ
次へ
「…いつまでそーしてんだよ」 面倒臭そうに髪を掻き上げる海都。 「…っ…う…だっ……て」 地面が、こぼれ落ちた涙で濡れる。 空っぽになった、今まであたしが住んでた家。 あたしの心の中も空っぽ。 …やだ。 もちろん、ばあちゃんのことは大好きだし、心配。だけど…。 この町も大好きだし、この家も大好きだし…。 なにより、この町のみんなが大好きだった。 この町からばあちゃん家までは、そう簡単に会える距離じゃない。 もしかしたら、二度と会えなくなるかもしれない。 そう思うと、流したくない涙まで、自然に出てきて――――。 「…っ…ずっ」 しゃっくりと鼻水を啜るせいで、うまく言葉が喋れない。 今ココにいる友達に、『ありがとう』って伝えたいのに―――。
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加