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「何の魔力かは興味はないけど、悪いもんではないでしょ」
「しかし、“この世界”に魔力はあり得んだろう?」
「…まぁな、あり得ねーけど悪意を微塵も感じねーんだからいちいちんなもんに反応なんかしてねーで無視しとけ。お偉いさんも手を打ってねぇなら尚更だ。だろ?」
「えぇ。“ガレナ・カテドラル”は黙認してるみたいよ」
「しかし…」とフーガは渋る。
「まったく、生まれ変わりが見つかってから文句でもなんでも言ってくれ」
テトラの言葉にフーガはグッと顎を引いた。フーガの位置からではテトラの表情は伺えなかったが、黒猫から立ちのぼる雰囲気に一瞬言葉を失う。
「…分かっている。すまない」
「いや?気にすんな」
ほんの少し猫背になったフーガを振り向き見たテトラは、笑いながら肩を竦めたのだった。
屋上の貯水タンク上で朝を待つ3匹。
テトラは顔を上げて夜空を見ている。
時刻はだいたい夜8時を過ぎた辺りだろう…と確認して、テトラは折り畳んだ腕に頭を乗せた。
フーガやバルメールも体から力を抜く。
闇を優しく照らす月光は、屋上に居る3匹も優しく照らしている。
幾つかの桜の花びらが風に煽られ、夜空に溶けて行くのをテトラは見送った―――
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