第一幕 深淵なる時の声

2/9
前へ
/247ページ
次へ
   世界は暗闇に満ちていた。  どこを見ても何もない。  その中に、1人の少女が居た。  少女だけが白く光輝いて、黒と対照的だった。  これは夢だと少女は気付いていた。酷く現実味がない不確かな夢だ。と…――  だけど、何も感じない筈の暗闇の中で、少女は凍えるような寒さを確かに感じていた。  これは「おかしい」と頭ではなく心が呟いた。  夢なのに、やけに意識がハッキリしている。  少女は驚いた。  いつも見ている夢じゃない。いつもと違う。似てるけど、違う。  その時、暗黒の世界で冷たい声が響いた。 「見付けた」  少女の世界がぐるりと反転し――。  そして、三枝楓(さえぐさかえで)は夢から目覚めた。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加