第一幕 深淵なる時の声

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   月曜日、午前7時30分。  朝日が淡い黄緑色のカーテンの隙間から差し込んでいる。  時計のアラームがけたたましく鳴る室内。壁は白く床は薄茶色。  緑色のゴミ箱には様々な食べ物の袋が溢れている。  ベッドの中で布団を頭までスッポリと被り眠っていた楓は、ぼんやりとしたまま時計を手探りで探し、けたたましく鳴り響いていたアラームを切った。  途端に静寂のとばりが部屋に降りるが、別の部屋から聞こえてきた食器の音に楓はむくりと起き上がった。 「……よ、っと」  ムクリと起きた楓は勢いよくベッドの上に立ち上がった。ガタンと大きくベッドが揺れる。その振動でベッド近くに置いていた観葉植物が少しだけ揺れた。  寝癖が酷いが、頭頂部のピョンと飛び跳ねた一房は他の寝癖よりも目立つ。150㎝の小柄な身長を伸ばすように、楓は大きな欠伸をした。  寝過ぎてほんの少し凝った体をほぐすように肩をグルグル回し、楓は窓のカーテンを開けた。  シャッ――という小気味良い音。  カーテンの隙間から差し込んでいた朝日が部屋を一気に照らす。  その眩しさに楓は目を細めつつ、青い大空を見上げた。太陽のエネルギーが身体に染み込んで来るのを感じる。  8階の窓からは、なかなか見晴らしのいい景色が一望できる。数羽の鳥が四龍神山の方へ飛んでいくのを目で追った楓は浮かべていた微笑をフッと消した。 「……そういやぁ…久しぶりに“あの夢”見たなぁ~…」  ついさっきまで見ていた夢。  あの夢をいつから見始めたか記憶は曖昧だが、幼い頃からたまに見る夢。  何も感じず、何も聞こえない暗闇に自分1人が立ち続ける。という変な夢だ。今まではそれだけで終わっていたのだが、今日見た夢はどこか違った。 「…今日のは…へん、だったな…」  酷く気持ち悪い夢だったな。と今は思う。  「見つけた」という声は初めて聞いた。  今思い出してもハッキリと脳裏に響く夢の中の言葉。  冷たく低い男の声だった。  何を見つけたのか、何が見つかったのか…。考えても何も分からない言葉。
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