第一幕 深淵なる時の声

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  「いつもと同じ暗闇の夢だったか?」 「そうね~……変化は無かったわね」 「わたしも無かったよ」 「あたしも無かった」 「あれは変な夢よね~。……いったい、なんなのかしらね?」 「さぁ?」 「同じ夢を見ること事態変だけどさ、暗闇にずぅ~っと突っ立ってるだけってのも変すぎるよね」 「アタシ達4人ともお先真っ暗って事じゃないかしら?」 「やめてよ!水帆!」 「そしたら、あたし達の未来は小学生の頃からお先真っ暗って事になるよ?」 「………愛美のは笑えない冗談ね」 「水帆もね!」  笑い合う3人の中で、楓は俯いた。  今朝見た夢は、たまに見る不思議な暗闇の夢で間違いない。……だけど、なんで自分だけ夢に変化があったんだ?……どうして…――。 「楓?」 「…――へ?」  呼ばれて顔を上げると、3人が心配そうに楓を見ていた。 「どうかした?」 「う…ううん!なんでもないぞ!」  楓は咄嗟に笑顔で嘘をついた。  声をかけてくれた愛美にはもちろん、2人にも、自分の夢だけに変化があったなどと言えなかった。  ただでさえ普通じゃない夢に、当初は恐怖すら感じていた4人。今はもう慣れたから笑い話にできている。  だからこそ、だからこそ楓は夢の変化を話すことを躊躇ったのだ。  もやもやとした胸にくすぶる不安が、楓を苛ましていたが、唾をゴクリと大きく飲むふりをして、胸にくすぶる不安を楓は無理やり飲み込んだ。  そのあとも自分達の両親が出てくるまで、4人は他愛もないお喋りに花を咲かせていたのだった。  
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