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「いつもと同じ暗闇の夢だったか?」
「そうね~……変化は無かったわね」
「わたしも無かったよ」
「あたしも無かった」
「あれは変な夢よね~。……いったい、なんなのかしらね?」
「さぁ?」
「同じ夢を見ること事態変だけどさ、暗闇にずぅ~っと突っ立ってるだけってのも変すぎるよね」
「アタシ達4人ともお先真っ暗って事じゃないかしら?」
「やめてよ!水帆!」
「そしたら、あたし達の未来は小学生の頃からお先真っ暗って事になるよ?」
「………愛美のは笑えない冗談ね」
「水帆もね!」
笑い合う3人の中で、楓は俯いた。
今朝見た夢は、たまに見る不思議な暗闇の夢で間違いない。……だけど、なんで自分だけ夢に変化があったんだ?……どうして…――。
「楓?」
「…――へ?」
呼ばれて顔を上げると、3人が心配そうに楓を見ていた。
「どうかした?」
「う…ううん!なんでもないぞ!」
楓は咄嗟に笑顔で嘘をついた。
声をかけてくれた愛美にはもちろん、2人にも、自分の夢だけに変化があったなどと言えなかった。
ただでさえ普通じゃない夢に、当初は恐怖すら感じていた4人。今はもう慣れたから笑い話にできている。
だからこそ、だからこそ楓は夢の変化を話すことを躊躇ったのだ。
もやもやとした胸にくすぶる不安が、楓を苛ましていたが、唾をゴクリと大きく飲むふりをして、胸にくすぶる不安を楓は無理やり飲み込んだ。
そのあとも自分達の両親が出てくるまで、4人は他愛もないお喋りに花を咲かせていたのだった。
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