226人が本棚に入れています
本棚に追加
9時過ぎ、桜木高等学校に着いた楓は、妹を連れた母と別れて、水帆達を探していた。
周りには楓と同じく真新しい制服に身を包んだ新入生達が落ち着かない様子で賑わっている。
ぶわっと勢い良く春風が吹き荒れた。
「わっ!?」
大量の桜の花びらが楓の視界に迫り、慌てて目を瞑る。パシパシと柔らかく頬や髪に当たる花びら。風音がひゅうひゅう、と耳を通り過ぎて行く。
目を閉じると不思議な事に、あらゆる感覚が研ぎ澄まされたようになる。
風の感触と春の匂い、陽の暖かさを楽しんでいた楓の服の袖を誰かが引っ張った。
「ふへ?」
「おはよう」
ニコリと微笑み挨拶してきた少年のブレザーの胸ポケットには、白い花のコサージュ。
日高の無愛想な瞳とは対照的な優しい瞳の少年に、楓も微笑み返した。
「おはよう!大地!」
「今日から高校生活スタートだね」
「おう。そうだな!」
ニコニコと本当に嬉しそうに目の前で微笑む大地に、楓もニコリと笑う。
「あら~?坂本くんじゃない?おはよう」
「おはよう。井ノ上さん」
「どうしたの?ナンパ?」と茶化す水帆に「違うよ」と坂本大地は苦笑した。
「楓は、まだ受付に行ってないわよね?」
そう言いながら水帆は桃色の花のコサージュと、クラス表の紙を楓に手渡した。水帆の胸ポケットにはすでに桃色のコサージュが付いている。
面倒見の良い親友に、楓は「ありがとう」と微笑んで胸ポケットにコサージュを付けた。
「坂本くん、おはよう」と愛美と美和も水帆の後方から現れ坂本に挨拶した。
「おはよう。春日さん、星田さん」
「あ!ねぇねぇ!楓も見た!?」
興奮気味に話す美和がチラリと楓が持つクラス表を見た。それにつられて、首を傾げながら楓もクラス表を見る。
A~Jまでクラスがあり、楓の名前は1番最後のJ組に書かれてあった。
「わたし達同じクラスだよ!」
嬉しそうな美和の言うとおり、楓達は同じJ組だった。しかも驚くことに、坂本大地と日高貴士の名前までもがJ組に書かれてあった。
「凄いな!アリスマンション全員同じJ組だな!」
楓も嬉しげに笑ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!