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「ほわ~…」と女子の興奮に驚く楓。
「どこに行っても慎兄はモテモテね」と水帆が苦笑して、美和は周りの女子の興奮具合に不安を感じたような表情だ。
愛美は相も変わらずニコニコと微笑んでいる。
「はいはい。落ち着いて、席に着きなさい」
まさに鶴の一声。慎次の言葉に女子はピタリと止まると、しずしずと席に着いた。そのギャップに唖然とする男子達。楓も唖然としている。
「楓と美和と水帆と愛美も早く席に戻りなさい」と慎次に名指しされ、楓達も席に着いた。
教壇に立つ慎次に、楓と水帆は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「皆さん。はじめまして、皆さんの担任の闇倉慎次と言います」
流れるような文字で慎次は自分の名前を黒板に書いた。
「1年間よろしくお願いします。教科は美術です」
微笑むスーツ姿の絶世のイケメン。スラッとした長身で色っぽい低い声となれば、吐息を零さない女生徒は居ない。
楓達以外の女生徒は惚けながら溜め息を吐いた。
「入学式のあと、簡単な自己紹介をするので、考えておくように」
教室が一気にざわついた。
そして、闇倉慎次は準備のため教室から出て行った。
「管理人ってここの教師だったんだな」
真横から聞こえた日高の声に、楓の心臓がバ、クンッ!と飛び跳ねた。
「あんた、アリスマンションに住んでて管理人の闇倉慎次が教師だって知らなかったの?」と呆れ気味の水帆。
「興味なかったからな。どっかの金持ちのオッサンが興味本位で管理人やってる位にしか思ってなかったしよ…」
本当にどうでもいいのか、欠伸をしながら日高は言った。
「金持ちのオッサンって…確かに金持ち過ぎるくらい金持ちだけど、慎兄はまだ27よ?オッサンはまだ早いでしょ」
「四捨五入したら30じゃねぇか。俺からしたら立派にオッサンだ」
「そうかもしれないけど、見た目はオッサンじゃないよ!」
と反論する美和の剣幕に一瞬たじろぎつつ、日高は「興味ねぇっつったろ」と言って自分の席へ戻って行ってしまった。
「まったく!失礼しちゃうよ!」
怒る美和を水帆が「まぁまぁ」と宥める。
いったん教室を出ていた闇倉慎次がまた入ってきて、入学式の流れを説明し、みんなは廊下に並んだ。
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