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ほどなくして、テトラの耳がピクリと微かな物音と気配に反応した。軽い動作で後ろを振り向く。
音もなく2匹の動物がテトラの背後に降り立った。その2匹もテトラと同じく[この世界]の生き物とは思えない風貌をしている。
テトラから見て右側には、群青色の眼鏡をかけた腹部が白い紺色のペンギン。
右ヒレと左ヒレに金色の細くシンプルなリングのブレスレットを3つ填めており、動く度にシャラリと軽やかな音を立てる。額中央には、水色よりも少し濃い色の楕円形の石。眼鏡の奥にある瞳も額の石と同じ色だ。
ペンギンの隣には、銀朱色の体毛の大型犬。
背には身丈ほどもある金赤色の翼。燃えるような体毛の色に反して瞳は涼やかな水色。額中央には、濃い緋色の楕円形の石。左耳にある紫色の雫形のピアスがキラリと光った。
「早かったな。バルメール、フーガ」とテトラ。
「バルメールが居るからな。転移には苦労しない」
無感情と言うよりも、堅苦しい喋り方をする大型犬のフーガ。
フーガの隣に立つペンギンのバルメールは目を細め、右手で器用に鼻を隠すと、周りを見渡しながら顔をしかめた。
「“ここも”空気が汚いわね」
女のような喋り方だが、声音は男。それでも、フーガやテトラよりは1オクターブ高い。
びゅうびゅう、と3匹の間を強い風が吹き抜けて行った。
「今回は半月が期限だ。その間に確実な収穫を得なきゃあなんねぇ」
テトラは言った。バルメールとフーガはジッとテトラを見ている。シャラリとバルメールのブレスレットが風に揺れて音を立てた。
「…この15年間世界各地を探し回ったが、手がかりも得られてない。残るはこの日本だけになっちまった。そして、ここにも居なければ俺達に明日はない」
ピリッとテトラ達の空気が張り詰める。
「だが、俺達が息をし、鼓動を動かしている今現在、俺達の主の身に何かあったとは考えにくい。ここが最後の正念場だ。身締めて捜すぞ」
ギロリと睨むような真剣なテトラの瞳を見返しながら「オーケー」と答えるバルメールの隣で、フーガも力強く肯いた。
「手始めに周囲10㎞から捜し始め、100㎞間隔で包囲を広げる。半月で日本中を捜すには余裕だろう」というテトラに、バルメールは「朝飯前ね」と肩を竦めるように両手を軽く上げる動作をした。
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