序幕 消された神話

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   高層ビルの次に移動した場所は、鬱蒼とした暗い森の中。 「――…っと、どこだ?」  テトラは隣に居るバルメールを見た。バルメールは資料をペラペラと器用にめくる。 「…多分、月城市から四龍川を挟んだ先の神域市(かみのいきし)江戸町(えとまち)の近くの…、…ほら、ここら辺だと思うわ」  バルメールは持っていた地図をテトラとフーガに見せた。神域市江戸町の近くにある四龍神山(しりゅうしんざん)の中に3匹は居るらしい。  地図を見ながら歩き出したバルメールのあとに続くテトラとフーガ。  少し歩くと、拓けた場所に出た。  ただの獣道ではなく、舗装路だ。真っ赤な鳥居が上の方まで続いている。 「…神社があるのか?」とテトラ。 「四龍神子(しりゅうみこ)神社ね。江戸町にはこの道を下ればすぐよ」とバルメールが下へ向かう一本道の先を指差した。  常人の目には見えぬほどのスピードで山を下るテトラ達。  真っ赤な鳥居の道はすぐに終わり、広い駐車場に出たが、まだ山の中腹だ。  街灯の明かりが1つしかない駐車場のそばに、トイレがあった。  トイレの中央には上へ続く階段があり、3匹は階段を上った。トイレの上は見晴らしの良い展望台のような場所だった。  だが、月城市と違い、神域市の町には街灯などの町明かりが少ない。何も見えない町にテトラは「なんも見えねぇな…」と呟いた。  テトラの呟きを隣に居たバルメールが拾った。 「…神域市江戸町。名前の通り江戸情緒を残す古めかしい町らしいわよ。現代的な建築物などは皆無で、街灯もちらほらしかないようね」  ペラペラと資料を何枚か捲りながら簡潔に答えたバルメールの言うとおり、暗闇の中にポツリポツリとしか街灯は見えない。  3匹は地面を蹴って空高く上昇し、風を切って夜の空を飛んだ。 「なにも無い町なのか?」  江戸町の明かりの少なさを見ながらフーガがバルメールに聞いた。 「いいえ。逆に有名な町らしいわよ?…時代劇?っていうお芝居の撮影とかでは重宝されてる町ですって。あと別名小さな京都って名前が売りらしいわ」  バルメールの話を聞きながら、テトラは下に広がる町並みを眺めている。  江戸町は山を削り周囲の土地よりも高く隆起し、高台のような場所にある小さな町だった。
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