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「ずいぶんと雰囲気が変わったな」
フーガの言うとおり、空を進んでいく内に下に見える町並みがガラリと変わっていた。
普通の民家が軒を連ねている。
建物の明かりなどは不夜町ほど明るくないが、江戸町と比べれば雲泥の差だ。
「真下は桜木町ね」
「桜木町…。この町に桜木高等学校があるのか?」
「えぇ、そうよ。…それから、あそこ見てほしいんだけど」
そう言うと、バルメールの手先から赤い線が伸びて、あるマンションを指し示した。
そこそこ高いマンションだが、他にも似たような高さのマンションやさらに高いマンションがポツポツとあるため、目立つ見映えではない。
テトラとフーガはマンションからバルメールへと向き直った。
「あのアリスマンションに明日桜木高等学校へ入学する子が数人いるのよ」
テトラは、アリスマンションをじっと見た。
「あそこにか?」
「ええ。…どうする?アリスマンション見てみる?」
「…いや、それよりも入学式の時に捜した方が手っ取り早い。その入学する奴らの名前はいくつある?」
「え~っと…」
資料をペラペラとめくるバルメール。
「6人ね」
「そいつらの名前は?」
「日高貴士と坂本大地の男の子2人に、井ノ上水帆、春日愛美、星田美和、それと、三枝楓の女の子4人よ」
資料には顔写真は無かったが、いくつかの個人情報が書かれてあった。それを覗き見ていたテトラは、[三枝楓]の部分で視線を止めた。
「この三枝楓っていうのは、2月4日生まれか…」
「他には早桜小鳥も2月4日のようね」
三枝楓の下の方に書かれた早桜小鳥の名前。資料を見ていた3匹は顔を上げた。
「早桜小鳥はアリスマンションに住んでいないのか?」とフーガ。
バルメールは上げていた顔を再度資料へと向けた。
「ええ。そのそばの家に祖母と2人暮らしらしいわ」
「…明日、そいつらの顔を見るのが楽しみだな」
ニヤリと笑うテトラに、2匹も頷く。
テトラは最後にもう一度アリスマンションを一瞥して、北へと進んで行った。
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