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風を切り進み、桜ヶ丘に建つ桜木高校の真上に到着したテトラ達。
桜木高校は桜木町の外れにあり江戸町に近いため灯りが少ない。
テトラ達は桜木高等学校の校舎の屋上に降り立った。
「…なかなかだな」
木々に囲まれた桜木高校は、人の手が行き届いた綺麗な校舎だ。静かで心地良い雰囲気がある。
「移動するぞ」と言うテトラにバルメールは頷いた。先に行くテトラにフーガも続く。
貯水タンクの上に降り立ったテトラは、満足げに頷いた。
「ここなら人目も気にせず身を隠せるな。人の出入りも皆無らしい」
埃や落ち葉、鳥の糞に汚れた屋上。業者が来る以外は誰も来ないのは一目瞭然だった。
3匹は汚れることには馴れているのか、特に気にすることもなく腰を下ろす。
「ここでは、今までにない期待ができるな」
強い輝きが込められたテトラのオッドアイ。
「えぇ、そうね」とバルメールも賛同し、フーガはいつもどおり無言で頷いた。
雲から顔を出した月の光にチラチラと照らされて、先ほどから桜の花びらが大量に飛んで来る。それに疑問を感じたテトラはバルメールへと振り向いた。
「ここはそんなに桜の木があったか?」
見回したが、桜らしき木は見当たらなかったな。と呟くテトラに、バルメールは「通称、妖怪桜」と答えた。
聞き慣れない名に、テトラは何だそれ。と言った表情と視線でバルメールを見た。
そんなテトラにバルメールは「さっき資料読んでたじゃない…」と呆れながらも、テトラに[妖怪桜]について説明した。
「この桜ヶ丘には樹齢も分からない巨大桜があるのよ。外周は約5mで全長10mの桜。“ここ”の常識では量れない桜よ」
「つまり…」
「そ。魔力が隠った桜みたいよ」
「どういう事だ?」と今まで黙って聞いていたフーガも話しに加わった。
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