01.見可者(ケンカシャ)

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 再度周辺に目をやる。  交差点の周りにはいくつもの白いビルが建っている。  どれも二、三階建てのもので、高層ビルとまでは言わないような高さのビルが、交差点を囲むようにいくつも建っている。  その一つ一つの窓は、暖かみのある黄色の明かりを灯している。 「…………っ」  ――視界に入った。  俺達が信号待ちをしている横断歩道の向かい側に、珍しい子がいる。  長い金髪に、黒のコートを着た少女。  俺達とあまり変わらない背丈の少女。  両手をコートの中に入れ、信号待ちをしている。  金髪の少女など、所詮は漫画やゲームの世界だけにいる存在だと思っていた。  でもその存在は。  その人物は、現にあの場所にいる。  周りより少し目立って、あそこにいる。 「本当にいるんだなぁ……あんな子が……」  思わず呟く。 「誰がいるんだ?」 「ん、いや……あそこに金髪の女の子がいるんだよ」 「どこにいるんだ?」 「向こう側の真ん中辺りだよ」  少女のいる向こう側を指差す。 「……わかんねぇよ」 「あそこにいるだろ」 「だからわかんねぇって!」 「ん……じゃ良いよ」  あの人混みの中じゃ、結構目立ってると思うけどな。 「その金髪の女の子が、どうかしたのか?」 「あぁ。金髪の女の子ってのが、少し珍しく思えてな」 「……まぁ、珍しいと言えば珍しいな」  あの女の子。  何というか――やたら存在感があるというか。  金髪ってのは、人混みの中でもあんなにも目立つもんなのか。 「――――あれ?」  気のせいか。  今、あの女の子の顔を、通行人の腕が突き抜けたような気が……。 「悠二、行くぞ」 「あ、あぁ……っ」  気が付けば。  篤は信号待ちをしている人集りを抜け、一人で先を歩いている。  信号は赤のままなのに。  横断歩道を渡り掛けていた。   「篤、危ねぇぞ!」 「平気平気! あそこの信号が赤になれば、こっちの信号はその内青に変わるんだからよ!」  俺から見て右にある横断歩道の信号を、篤は後ろ向きで歩きながら指を差す。  その信号は篤の言う通り、赤だ。  今の状態で横断歩道を渡る。  それはつまり、先走っての横断だ。
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