56人が本棚に入れています
本棚に追加
それはまるで、侍が抜刀をする時のような構えだ。
彼女もそれと同様、腰にある何かを掴んで抜くが如く構えを俺達に見せる。
何をするのかと思った矢先――――煌めく。
「創生――」
少女が淡泊にそう呟くと。左手首に付けている銀色の腕輪の小さな十字架が瞬間的に煌めく。
それとほぼ同時。
少女は腰から何かをゆっくりと抜き始めた。
眩いほどの白い閃光を放つ、細い棒のような一条の何かを。
やがて抜き終わると、それは閃光の白色から、徐々に暗い色へと変わっていく。
閃光の正体。
それは――1本の剣。
手前よりも剣先のが若干太い撥のような形の剣身は白銀の光沢を放っており、小さな鍔と細い柄は彼女の髪と同じ金色だ。
そんな不思議な形の剣を、彼女は空中からいきなり取り出していた。
「なんだよそれ……」
驚かずにはいられねぇ。
目の前にいる少女が閃光とともに、いきなり空間から剣を抜いたなんてのは――普通じゃありえねぇ。
「私の死神の鎌――『鎮魂歌』よ」
胸先まで剣を掲げ、説明する少女。
「死神の鎌……」
どうしてか。
その言葉を耳にしただけで、全身に奇妙な感覚が走る。
「いや~、すげぇな君! 今の手品ってどうやっ――」
「今一度確認させてもらうけど、貴方の名前は?」
「えっ?」
篤の言葉を遮る。
わざとらしく、話を変える。
「貴方の名前は?」
「俺は上坂篤。こっちは伊澤悠二だ」
「……そう。どうも」
一瞬だけ表情を緩め、静かにそう言った。
剣の銀色が、一段と光る。
僅かに光沢を持っているその銀色は、より光沢を増す。
この交差点に、その銀色は色を浮かばせる。
最初のコメントを投稿しよう!