01.見可者(ケンカシャ)

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「…………」  茫然自失。  空間から剣を抜き、今度はそれを光らせている。  そんな少女に対し、驚く他は無い。  数瞬の間、驚愕に浸る。 「おぉ~! すげぇなその剣!」 「……っ!」  その最中。  篤が目を輝かせながら、少女の近くへ寄り掛ける。 「篤! そいつに近づくな!」 「……どうしてだよ?」  脚を止め、こちらに半身を向ける。 「えっ、あ……」 「なんだ悠二。この子が悪者にでも見えたのか?」 「いや、そういうわけじゃ……」  どうしてか自然と。  剣を持っているという事に反応して。  反射的に、叫んでしまった。 「だろ? そもそも悪者が、こんな可愛い子なわけねぇだろうが」 「…………」  その子が可愛い?  いや。  俺的にはむしろ、可愛いよりも怖い。  その鋭利な風貌には、自然と息を呑むほどだ。 「それでこの剣って、どういう構造になってんだ?」  篤は、剣の剣身に触れる。  その実情は、自然に起きた。  突如として。  何の前触れも無く、唐突に。  篤が剣身に触ったその瞬間。 「ん?」  篤は、自分の手を確認する。  剣身に触れた手。  その手が――霧のように消え失せた。 「うわぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」  怯えて地面に腰を落とし、腕を上げたまま後退する。  誰でも怯えるだろう。  誰しもが恐れるだろう。  自分の手が、突然消えるなんて言うのは。  人に恐れるという感情が生まれるのは、それが思いもよらない事だからだ。 「篤!」  早急に、腰を落とした篤に寄る。 「な、なんだよこれ!? 一体どうなってんだよ!?」 「――っ!?」  先程の呑気な態度とは打って変わって、今は手の無い自分の腕を酷く恐れている篤。    手はまるで、刃物か何かで両断したかのように跡形もなく消えており、手首からは血ではなく、白い靄のようなものが出ている。  それは、異様な光景だった。  そして同時に、どうしてなのかという感情も大きかった。  血は出ていない。  変わりに白い靄のようなものが出ている。  六割の驚きと四割の疑問。  その感情が、俺の中を駆け回っていた。
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