56人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
茫然自失。
空間から剣を抜き、今度はそれを光らせている。
そんな少女に対し、驚く他は無い。
数瞬の間、驚愕に浸る。
「おぉ~! すげぇなその剣!」
「……っ!」
その最中。
篤が目を輝かせながら、少女の近くへ寄り掛ける。
「篤! そいつに近づくな!」
「……どうしてだよ?」
脚を止め、こちらに半身を向ける。
「えっ、あ……」
「なんだ悠二。この子が悪者にでも見えたのか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
どうしてか自然と。
剣を持っているという事に反応して。
反射的に、叫んでしまった。
「だろ? そもそも悪者が、こんな可愛い子なわけねぇだろうが」
「…………」
その子が可愛い?
いや。
俺的にはむしろ、可愛いよりも怖い。
その鋭利な風貌には、自然と息を呑むほどだ。
「それでこの剣って、どういう構造になってんだ?」
篤は、剣の剣身に触れる。
その実情は、自然に起きた。
突如として。
何の前触れも無く、唐突に。
篤が剣身に触ったその瞬間。
「ん?」
篤は、自分の手を確認する。
剣身に触れた手。
その手が――霧のように消え失せた。
「うわぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
怯えて地面に腰を落とし、腕を上げたまま後退する。
誰でも怯えるだろう。
誰しもが恐れるだろう。
自分の手が、突然消えるなんて言うのは。
人に恐れるという感情が生まれるのは、それが思いもよらない事だからだ。
「篤!」
早急に、腰を落とした篤に寄る。
「な、なんだよこれ!? 一体どうなってんだよ!?」
「――っ!?」
先程の呑気な態度とは打って変わって、今は手の無い自分の腕を酷く恐れている篤。
手はまるで、刃物か何かで両断したかのように跡形もなく消えており、手首からは血ではなく、白い靄のようなものが出ている。
それは、異様な光景だった。
そして同時に、どうしてなのかという感情も大きかった。
血は出ていない。
変わりに白い靄のようなものが出ている。
六割の驚きと四割の疑問。
その感情が、俺の中を駆け回っていた。
最初のコメントを投稿しよう!