01.見可者(ケンカシャ)

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「おい……篤は?」 「彼ならもう、『死世界(デスワールド)』へ行ったわ」 「『死世界(デスワールド)』?」 「……あぁ、人間界(こっち)では呼び方が違うらしいわね。『死世界』というのは、こっちで言うところの『あの世』よ」  篤はもう『死世界(デスワールド)』へ行った?  呼び方が違う? 『死世界(デスワールド)』は、こっちで言う『あの世』? 「この――篤は?」 「それはただの『抜け殻』――死体よ」 「それってどういう……」 「彼は完全に死んだという事よ。何をやってももう生き返りはしないわ」 「…………」    突然突き付けられる現実。  篤が死んだという現実。  生き返ったと思っていたけど、結局は死んでしまったという現実。 「あ……ああ……」   嗚咽が溢れる。  失せ掛けていた感情が戻ってくる。  悲しみという名の感情が、再発する。 「篤! おい!」  篤の(かたわ)らにしゃがみ込み、同じ様にまた身体を揺する。  ……同じ様に、反応は無い。   「完全に死んだと言ったでしょう」  少女もまた同じ様に、感情無く言う。 「……おま――」 「でも安心して」  少女は下ろしていた剣を片手に持ち直す。 そして――宣告のように言う。 「貴方も同じ霊魂なのだから、また直ぐに『死世界(あっち)』で会えるわ」  剣先を、少女に向き掛けていた俺の顔に向ける。 「お、おい! 何するつもりだ!?」 「何よ。今更驚く事じゃないでしょ? 貴方も彼と同じ霊魂なのだから、同じ様に昇華するのよ」  一方的に言われる。 『昇華する』などという新しい言葉も言われ、俺の思考は完璧に置き去りだ。 「……それじゃ」  顔に剣先を向けたまま、少女は両手に剣を持ち直す。  そのまま剣を後ろへ引き――突きの構えをする。 「さようなら」  視界には、迫る銀色の剣先。  普通ならここで、俺は避けようとするべきだ。  こんな見ず知らずの金髪の少女に、殺され掛けているからだ。  でも俺は避けなかった。  動かなかった。  死を覚悟したからじゃねぇ。  反射的に目を瞑ってしまったからだ。  目を瞑れば、視界は闇に成る。
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