01.見可者(ケンカシャ)

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   学校の課題は何故あるのだろうかという疑問は、恐らく誰もが一度は思った事のある疑問だろう。  俺もその疑問は中学の時などに思った事がある。    その疑問に対して、大概の先生は「自分のため」という答え方をする。  でも。    俺的にその答えは、少し違うんじゃないかと考える。  俺の答え方。  それは、「成績を良くするため」。  「成績を上げるため」なんじゃねぇかと、個人的に思う。  課題をする。    要は、勉強をする事に変わりはねぇ。  勉強をすれば、頭が良くなる。    頭が良くなれば、成績も良くなる。  これが成績向上への方程式。  …………。  なんてな。    偉そうに言っているけど、俺の成績は、なかなか方程式通りにいかないのが現実。  勉強しても、あまり頭は良くならねぇ。    そして成績も良くなりにくい。  となると、方程式の信憑性が疑われる。    ……いや。  実際に良くなりにくいのは、俺が原因でもある。    俺は日頃から勉強をほとんどしねぇ。  そんな俺がいきなり勉強をやり始めても、頭が良くなりにくいのは当たり前だろう。    なら良くなるように、もっとしっかり勉強をするべきだ。  でも。    そう思っていても。  俺は――本気になれねぇ。  高校二年生の冬は、進路を決めるにも大事な時期。    しかし、実際の大学受験まではあと一年近くある。    そう思うと、今一努力ができねぇ。  危機感みたいなものを感じにくい。    やるべき時なのに、中途半端にしかやれねぇ。  そんな個人的低迷期にいるのが今の俺だ。    ……いや。  実際に俺は、人一倍やらなくてはならないはずだ。    去年は本気にならなかったせいで、とんでもない痛手を被ったからだ。    去年――正確に言えば今年。  俺は留年した。    主な原因は学力不振だ。  中途半端とも言えなかったほど、俺は成績が悪かった。    赤点を何回取ったかなんてのは、回数が多すぎてもう覚えていない。  さらに言えば、学年で成績の悪いほうから順に十人の名前を上げると、俺はその中に入っていた。    それくらい俺は成績が悪かった。  俺を含め、留年したのはその十人の中の三人。    しかも俺以外の二人は進級が出来なかった事を境に学校を退学してしまったらしい。  
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