01.見可者(ケンカシャ)

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   ともあれ俺は、今年だけはなんとして進級をしなくちゃならねぇ。  そうしなければ、俺に待っているのはまた暗い未来でしかなくなってしまう。    進級できずに、留年をする未来。  顔馴染みはみな進級し、俺は孤独に高校生活を送る未来。    そんな未来はもう勘弁だ。  俺にとってそれは、嫌な未来像でしかねぇ。    とは言っても、俺の本来の同級生はみな今年で高校三年。  来年の三月上旬に卒業するのだ。    すると俺に待っているのは、同級生が卒業するのを下級生の側から見送るという確定している未来だ。  確かな未来だ。    変えられない未来だ。  望んでいない未来だ。    ……。  俺はどうして、こんな学校生活を送っている?  そもそもこの学校生活に、深い意味はあるのか?    同じ内容の授業をもう一年勉強し、同じ内容の学校行事にもう一年参加する。  俺にとっては……嬉しい事じゃない。    むしろ嫌な事に近い。  それらは単に一年の繰り返しにすぎないからだ。    文化祭や運動会は、一年に一度だけ行ったりするから楽しい事に思える。  それに、行事の感じ方は学年によって様々だ。    一年の時に楽しいと感じられなかった行事が、二、三年の時には楽しく感じる事が出来る。  だから良い。  だから面白いのだ。    俺はこの場をもって、それだけは言わせてもらう。  そういうわけだ。    今まで長々と語ってきたが、それは意味の無いただの愚痴だ。  幾ら前の事を言っても、すぎた事は変えられない。  だからこの話は、留年を経験した学生の愚痴とでも捉えてほしい。
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