6456人が本棚に入れています
本棚に追加
厨房の扉を開ける。誰も居ない。
当然ね。今の時間を考えると、子供は寝てる時間だものね。
食器を流しへと運ぶ。その時、視界に紙切れが写った。
《食器は置いといて下さい。
アーノルド》
「ふふっ…アーノルドったら、私に働いて欲しくないのかしら」
スタン・アーノルド。
スキンヘッドが輝き、茶色の瞳は柔らかく、40を越えた良いおじさんだ。
この城の料理長にして、かなりの世話焼き。自分の仕事で手一杯の筈なのに人の心配ばかりしている。
「ホントにいい人が多いわ…」
私の予定を知ってるのか、こんな書き置きを残すなんて。
アーノルドの言い付け通り、食器を流しに置いて、厨房を出る。
「ユーリは寝たかしら…」
今すぐにでも戻りたいが、この後、王城の一角で会議がある。
それには参加しないといけない。
「ごめんなさいユーリ…終わったらまた行くからね」
聞こえる筈はないがそんな言葉が漏れる。
最初のコメントを投稿しよう!