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優の想い
そして約束の週末がやってきた。
「楓ー、迎えに来たから乗れー」
優の黒の軽は、いつも手入れしているだけあって、太陽の光を眩しく反射させた
「じゃ、よろしくお願いします」
優の車は、たかちゃんと同じ甘いムスクの香りがした…
優の家は、アタシの家から車で15分程のところにある。
「着いたぞ~」
「汚いけど我慢して(笑)」
「そんなに汚くないじゃん。」
黒と白で統一された、シンプルな部屋。
「むしろきれいな方だよ、隆司なんて散らかし放題だったし…。」
「隆司は確かに散らかしまくってたなー」
「ここ座っていい??」
アタシは、大きいソファーについている、小さい一人用ソファーを指差した。
「えー、そこ俺の特等席なんだけど~(笑)
うそうそ、
どうせなら二人でここ座ろ。」
と、優は大きいソファーを指差した。
「そだね。
そうしよ。」
「俺さ、今美容師の仕事してんだ…」
「へぇー…でも、確かに優っぽいわ」
「今度からさ、俺の職場来ない?
美容師やってると、なかなか休みとれないから会う機会もないしさ。」
「え、そんなの悪いよ…
迷惑かかるし。」
「大丈夫。オーナーも許してくれたから。」
「それじゃ、お邪魔させてもらうね。」
「おう。」
その後も、優の仕事の話や、隆司との思い出話で盛り上がった。
「なぁ楓…。」
「ん…?」
「楓、俺のこと…
好き…?」
「好きだよ…?」
「楓、今嘘つきの目してる…」
「何言ってんの(笑)
ってか嘘つきの目って何(笑)」
「ホントなんなんだろうね~」
「何それ~。ワケわかんない。」
―
優の言葉は図星だった。
アタシは、嘘をついた…
本当はまだ隆司を好きでいる…
「なんなんだろ、俺…
楓が隆司の話するとき、俺の話し聞くときの何百倍も楽しそうだからさ…
聞くたびに、楓は、まだ俺を好きになってくれないんだって、すげぇ悲しくなる…」
「まだ俺じゃダメなのか…?」
その時、優の頬を何かがつたった…
―
それは、強がりの優が流した2回目の涙だった。
アタシのせいで流した涙は、静かに床へと、
そして、アタシの心へ"ずしり"と落ちた…
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