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妻が出てい行った。何故妻が家を出たのかは私には解らない。彼女とは大学時代からの付き合いだった。先進国の中から群を抜いて数えられるわが国の、さらに国内切っての研究グループに所属していた。
我々は高々一塊の学生では無く、既にある重大な国家プロェクトと直結していたのだ。
早い話しが宇宙開発の技術者と新たな惑星探査団の養成を担う機関だったのだ。
妻は技師として、私は宇宙飛行士となるべく共に学んだ。
利発で聡明、実直で研究熱心な妻は直ぐに芽が出て技師の腕を遺憾なく発揮した。私は時には躓きながらも宇宙空間を仮想した無重力訓練、船内生活と宇宙空間での作業、ロケットの接続や切り離し解体の訓練を幾度となく繰り返した。
他にも抜きん出た訓練生は二三いたが、妻は私を選んだ。
今思い返してみても不可解なのだが恋愛とはえてしてそう言う物なのだろう。
とにかく、好意は抱いていたが高嶺の花と早合点し勝手に自分の中で諦めかけていた私に意外にも妻の方から猛アタックをかけて来たのだ。
「あなたの直向きな顔をずっと見ていたわ。あなたが忘れられない」
とか何とか言って近づいて来たあの日の事を、今も昨日の事の様に覚えている。
とにかく私は彼女に夢中になった。挫けそうになった私をいつも支えてくれた。
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