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「ねぇ、イアハート。」
カノンノがイアハートに訊いた。
「イアハートは、シンが好きなの?」
率直にカノンノに訊かれて、イアハートは一瞬ドキッとした。
だが、カノンノの真っ直ぐな瞳に後押しでもされたかのように、言った。
「うん。シンが好き。」
カノンノはニッコリと笑った。
「あたしもシンが好き。だから絶対に、シンを取り戻そうね!!一緒に。」
イアハートはカノンノの芯の強さに感動をした。
コンフェイト大森林を抜けて、世界樹に向かったカノンノ達は、不思議な空間を見つけた。
「こんな扉あったっけ?」
ルカが首を傾げた。
「行きましょ。」
イリアは重々しい扉を開けた。
「…何が目的なんだ?」
シンは目が覚めていて、カノンノを睨みながらそう言った。
手足は鎖で縛られていて、身動きがとれないシンの前に、不適な笑みを浮かべるカノンノと名乗る少女。
「あなたはディセンダー。世界樹と一体化している存在…あなたを手に入れれば、世界樹も手に入れられるわ。」
「そりゃ残念だな。…僕は確かに世界樹から生まれた。けど、僕がたとえ朽ちても、ディセンダーはまた誕生する。僕の代わりなんかいくらでもいるんだよ。」
シンが言うと、カノンノはクスッと笑った。
「こんな話を知ってるかしら。ディセンダーってね。けして正義の味方じゃないのよ。人間が住む世界に絶望して、世界を滅ぼしたディセンダーも何人もいるの。」
シンは少女を睨んだ。
「僕はそんなことはしない!!」
「あなたはそうでしょうね。こんなに身を削ってもルミナシアの為に働いてるくらいだもの。かわいそうに。…あなたがこんなに守ろうとしてるルミナシアはホントにあなたを必要としているのかしら。」
シンは言葉に詰まった。
アドリビトムの皆ですら、それぞれの世界があり、結束の固い仲間がいる。きっと自分がいなくても大丈夫。
最近のシンはそう思っていた。
「僕は…。」
少女はシンに耳打ちをした。
「かわいそうなシン。大丈夫。私があなたを救ってあげる。」
「カノン…ノ。」
シンは意識が薄れていった。
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