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「…っ、痛…。」
部屋を出たシンが頭を抑えていると、カノンノが心配そうに顔を覗いてきた。
「シン、大丈夫?」
カノンノが言った。
「ん?大丈夫だよ。ごめん。食堂先に行ってて。」
シンは優しくそう言った。
カノンノは食堂でおやつを食べながら、ため息をついた。
「あら、カノンノどうしたの?」
元気のないカノンノに気づいたクレアに訊かれて、カノンノはうつむきながら言った。
「好きな人を独り占めしたいって…わがまま…なのかなぁ。」
クレアは驚いて、傍にいたシェリアと顔を見合わせた。
「みんなに優しいって、すごく良いことじゃない?でも、時々それがあたしだけに向けられたらいいのに、なんて思って…。」
カノンノの話を聞いた、シェリアは言った。
「確かにシンは誰にも優しいわね。」
クレアはカノンノに優しい笑顔を向けた。
「ちょっとシェリア!!誰がシンだって…。」
「あら。見てればわかるわよ。」
カノンノが真っ赤になっていたその頃、シンは。
クシュッ
お約束。
機関室でチャットを手伝っていたシンは、チャットに話しかけた。
「チャット、このボルト締めればいい?」
シンはそう言って、チャットを見た瞬間、チャットが足をひっかけ、立てかけていた鉄板がグラッと揺れたことに気づいた。
「チャット、危ない!!」
シンはチャットの小さな体を抱え込むように、崩れた鉄板からチャットを庇った。
ガラガラ…ガシャンッ!!
とてつもない音に、部屋にいた皆が出てきた。
「チャット、大丈夫か!?」
ロイドがそう言うと、チャットは、青い顔で言った。
「ボクは大丈夫ですけど…シンさんがっ!!」
するとそこには、鉄板の下敷きになっているシンがいた。
「シン、大丈夫か!!しっかりしろ!!シン!」
ロイドとスタンがシンを助け出したが、シンは意識がなかった。
シンは医務室に運び込まれて、アニーとルカ。ミントが懸命に処置に当たった。
「シンは!?」
医務室に駆けつけたカノンノは、泣きそうな顔で言った。
パニック気味のカノンノを、ヴァンが優しくなだめた。
「落ち着きなさい。今診ているところだ。」
締め切られた医務室のドアがあいたのは、それから数時間後。
医務室のベッドに、頭に包帯が巻かれたシンが寝ていた。
「大丈夫。命に別状はありません。」
カノンノは真っ先に医務室に飛び込み、寝ているシンの手を握った。
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