◆あなたがいれば◆

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「シン…?」 アンジュが鋭い瞳で睨むシンを見た。 「アンジュ、シンから離れろ!!今のシンは正気じゃねぇっ!!」 スパーダに言うより先に、シンはアンジュに襲いかかった。 アンジュはヒラリと身をかわした。 だがシンがすぐに体制を整えてアンジュに襲いかかろうとした時だった。 「シン!」 シンを呼んだのはカノンノだった。 シンはゆっくりカノンノのほうを見た。 「カノンノ、逃げろ!!」 スパーダに言われたカノンノは、シンの前に立ちはだかり、動こうとはしなかった。 「…カノンノ…。」 シンはそう言った。 「シン…。」 「カノン…ノ、逃げろ…。ダメだ…僕は…。」 シンはそう言った瞬間、カノンノに襲いかかった。 「カノンノッ!!」 皆が息を飲んだ瞬間。 ビリッ。 アンジュが後ろからスタンガンをシンに当てた。 シンはそのまま意識を失い、倒れた。 「う…ん…。」 シンは目を覚ました。 朦朧とした中を見渡すと、そこはバンエルティア号内の自分の部屋だった。 「シン…?」 まだはっきりとしない視界の中、ピンク色の髪の少女の姿を見た。 「大丈夫!?シン…。」 シンは少しずつ、微かな記憶をたどった。 手に残る感触。 スパーダの首を締め上げたことや、アンジュやカノンノに襲いかかったことを思い出した。 「僕…何てことを…。」 シンは思わず頭を抱えた。 「シン…。」 「何か頭の中に聞こえたんだ。…そこから僕は…。」 少々パニック気味のシンを、優しく抱き締めてきた。 優しい香りにシンは自分の身を任せた。 すると、甘い香りとともに、唇が重なった。 一瞬驚いたシンだったが、そのまま柔らかいその感触を受け入れるように抱き締めた。 だがそんな二人を見ていたのはカノンノ。 目の当たりにしたのは、シンとイアハートのキスだったのだ。 カノンノは思わずその場から離れた。
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