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そんな親友の悪知恵に嵌められた能天気な僕は勿論反抗しまくった結果、功を成さず親友の子供を頂く事になってしまったのである。
「章ちゃんは…章ちゃんはそんな酷い人間とちゃうやろ?!俺に自分の子を売れって言うんか?!なぁ、そんなん言わへんやろッ?」
そんな台詞を涙ながらに訴えられ、小一時間説教じみたお告げやら何やらを語られた僕は完全に親友の口車に乗せられてしまった。
親友を助けたい!何なら牛乳もちゅーぎちゃんのを貰わなくて良し!親友の為にも自分の為にもなる!こんな上手い一石二鳥の話が有って良いものか!いや、今の自分には有るんだ!さぁ、立ち上がろう!今こそ僕は新しい自分に出逢う時なのだ!
そんなお馬鹿な僕。悪い悪魔に洗脳された従者のような思考にその時は何も違和感は感じなかったのだ。
つまりそれが事の発端だった。
そんな悪魔と契約した日から1ヶ月。
無事親友の子供が産声を上げた。
親友はひっきりなしにニヤケては携帯の待ち受けを眺め、そして僕に見せつけたのだった。
ただ僕は素直に喜べなかった。
何故ならば性別が一緒だったから。
本来一般家庭に普及されている牛は当然牝で牡なんて聞いた事が無かった。
有るとしたら一般家庭などでは無く、怪しさ満点な金持ちかソッチ系の風俗だった。
正しく言うと卑しい意味でしか能が無い。
だけど悲しい事に僕は同性にも手を出す習性が備わっていた。
男に突っ込み喜ぶ僕もかなり怪しい奴に違いない。
悪い言い方をすれば運悪く産まれてしまった牡牛。
悪い言い方をすれば男好きな僕。
だけど良い言い方をすれば別に性別なんか気にも留めず産まれてこれた牡牛。
良い言い方をすれば男好きで良かった僕。
つまりはお馬鹿な僕は親友の子供にとても運命を感じてしまっていた。
出逢う事が昔から決まっていたのではないかと。
そんな僕を見てしてやったり顔だった親友は、牝よりも成長の速い我が子を今すぐにでも嫁がせると騒いだ。
僕も僕で今すぐにでも嫁にくれと騒いだ。
その時は忘れていたのだ。忘れていたって後の祭り。
牛乳は?
生活費は?
その他諸々数えれば切りの無い問題点。
そんな何とも言い難い走り出しだったのである。
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