197人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、余り宜しくない最中でも良い事は必ず有るものだ。
「…あ」
産まれて1ヶ月。
初めて親友宅へお邪魔になって、話題のちゅーぎちゃんにご対面した。
僕の中の噂のちゅーぎちゃんとは違いとても色気のある牛だった。高い身長がとても魅力的で、僕を見下げる視線にドキリとした。
そんなマゾな僕を一瞥した親友は早速子供を見せたいと寝室へ姿を消した。
ちゅーぎちゃんと座りながらも対峙した感想は………、胸が大きいという事以外何も無かったと思う。
服を破りそうなぐらい大きい胸から搾乳された牛乳を飲んでいたのかと考えると、少しだけ興奮したのだった。
そんな僕の厭らしい思考を一刀両断するように寝室から現れた親友を見上げれば、確かに小さな存在を胸に抱いていた。
僕はその子を見た瞬間、体の細胞全部が沸騰したんじゃないかってくらい反応して見入ってしまった。
『…もー?』
ちゅーぎちゃんと瓜二つな顔立ちのせいか牡を感じさせず無意識に両腕をその子に向かって伸ばしていた。
『…もぉー、にゃう?』
そしてその子は牛耳?をぱたぱたさせながら僕の指を軽く握り締め、やがて僕に向かって小さくて短い腕を目一杯伸ばしてきてくれたのだ。
そりゃもう運命を感じさせずにはいられない美しい出逢い。
丸みの帯びた頬やおっとりとした眼差し。育ち盛りのせいか、食っちゃ寝食っちゃ寝食っちゃ寝を繰り返す生活習慣。
親友の元から頂いてきて早2ヶ月が経とうとする頃。
その子は人間年齢でいう5・6歳にまで成長しており名前を『ただよし』と名付けた。何故かと理由を付けるならば芸能人の大倉忠義に似ている気がしたからである。但し、勿論親友にも許可を頂いた。何ならばお墨付きである。
嫁いで貰った当初は、親友もちゅーぎちゃんも悲しそうにしていたが今となっては優しく僕達を見守ってくれている。
だがやっぱり親友は悪魔だった。
「ただよしの事掘ったらホンマにぶち抜くで?同意の上やったらしゃーなしに許したるけど―…」
その後の言葉は都合良く忘れた。
そんなこんなで始まった僕達のワンダフルライフ。
1日1日大人になるただよしに喜びを感じつつ、ちゃんと仕事も頑張ってしっかりサラリーマンをしている今日この頃。
気付けばただよしと出逢ってから2年の歳月が経過しようとしている。
最初のコメントを投稿しよう!