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「あ、俺行ってくるわ!応援よろしく!」
そして、第一種目の200m走へと走っていく隼佐。
他の同じ組の人からも声をかけられ「応援してるね」と微笑んであえて気づかないフリ。
誰にも返されなさった手をさ迷わせながら走っていく様はこの上なく面白かった←
因みに、俺が出る種目はクラスの奴らが勝手に決めていた。
まぁ生徒会室に行っていたから仕方ないかもしれねぇけど。
だけど、騎馬戦をこのキャラの俺にさせるとか鬼だ。
しかもコスプレリレーやら借り物競走やら…クラスの奴らは俺に何を求めてんだよ。
「先輩」
どんどん走っていく生徒と、イケメンといわれる奴らだけに降り注ぐ応援を微笑みを浮かべたまま見ていると、不意に後ろから話かけられた。
「あ!お前らあっち行くぞ!」
「邪魔になっちゃう!」
ん?と後ろを振り向くと同時に、周りの生徒が騒ぎ出す。
声をかけた人物を目にとめる頃には、周りに居た生徒は5m近く離れてこちらを伺っていた。
…何なんだ?
「先輩、あの…すみません」
「?どうしたの?」
声をかけてきたのは、可愛い可愛い厘也。
不思議な周りを見渡しながらも、どうしてか申し訳なさそうな顔をしている厘也に声をかける。
あ、スタートラインで隼佐が叫んでる。
「俺と先輩が、付き合ってるって噂が…」
「…は?」
何か叫んでいる隼佐を視界から消した所で、厘也が言った言葉に素が出てしまうほど驚いて固まった。
え、厘也と俺が?付き合ってる?噂?
…ああ、何か見えてきた。
だから周りの奴らは厘也が来た途端に離れたのか。
だから今、様子を伺うように見てんのか。
「…まぁ、いいんじゃね?人の噂はなんちゃらって言うし。」
多分、噂を耳にした風紀委員長様から何か言われたんだろうな。
不安そうな顔をしてる厘也に、周りには聞こえないよう、小声でそう言った。
「不思議だね、僕は美紀様をこんなにもお慕いしてるのに…でも、誤解される様じゃ、親衛隊隊長はできないかな…」
そして、直ぐに悲しげな顔で周りに聞こえる声で言うと、親衛隊隊員を筆頭に慌て出す。
「そ、そんな!斎様のお気持ちは十分知ってます!」
「一途な木葉が簡単に心変わりとかありえねーよな!」
…ほんと単純で扱い易い奴らだな、なんて思いながら、近づいてきた奴らを見ていた俺は気づく事はない。
「…すみません」
複雑そうな顔で、そのまま去って行った厘也に。
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