鬼の子

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─主は儂の子じゃ…主は妖を護る鬼神の子じゃ─ ─お前のせいで…母さんは死んだんだ─ 真っ暗な暗闇の中で、浮かんでは少年の脳裏に焼き付く。少年、喜々津龍希は暗闇の中立ち尽くしその焼き付く言葉に表情を歪めた。 出生前、胎内の記憶を持つ龍希は謎の声を何度も聞いた。母の声を聞くたびに、お前は鬼の子だと。全く理解はできなかったが、彼は母の子ではないのかと未熟児ながらに感じていた。 そのせいかはわからない、だが龍希が産まれたと同時に、母親はこの世を去ってしまった。赤子が産声をあげる理由は初めての呼吸だと言うが、彼にとっては自分の誕生のせいで母は死んだのだと悔やんで泣いていた。 彼はその瞬間すらも懸命に覚えていた。自分自身を見て微笑む母が、自分自身を抱かずに死に逝く様を。 物心ついた頃には、父親から母親を殺したのはお前だと、責め続けられ殺されかけたときもあった。 そんな記憶がぐるぐる渦巻くなか、たたずんでいた少年はみるみる青年へと成長し、歪めていた顔を笑みへと変えていた。
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