《序章》

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「あー疲れた~。 秋光(あきみつ)ーまだ着かないのー」 「アホ、お前俺の家が学校からどれだけ離れてるか知ってんだろ。 あーうー言ってたってすぐに着ける訳じゃねぇんだから静かにしてろ」 「うー……」 時刻は17時、季節は秋から冬に移り変わり日中は燦々と輝き、光を与えてくれた太陽も今は水平線の向こうに沈もうとしている そんな夕陽に当てられて、俺の隣で頬を膨らませている少女ーーー南野夏鈴(みなみのかりん)の髪は仄かに茜色の光を帯びていた 「まあまあ夏鈴、たまにはいいじゃない。 皆で歩いて帰るのも久し振りだし、それにこんなに綺麗な景色も見れることだし」 そう言って夕陽に手を翳して光避けにし、うっすらと目を細めて広がる景色を見やりながら微笑むのは夏鈴と同じく、クラスメイトである東谷春奈(あずまやはるな)だ そして春奈が見るその先にあるのは広大な海原 水面に当てられた光は波に揺られてキラキラと乱反射を繰り返し、宝石さながらに輝いている 「そんなに感動するもんかねぇ。 別に何時もの海とたいして変わらないのに」 「ふふっ、毎日見てる西條(さいじょう)君はもう見飽きたのかもしれないけど、私たちは普段あまりこっち側に来ないからすごい新鮮なのよ」 「ふーん……」
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