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どこにそんな力があるのか大島くん。見事に僕を引きずってトイレの前まできやがりました。耳ちぎれるかと思ったよ。
「…いてて…、こ、この先がさっき音がした所だよね…」
つねられた耳をさすりながら、トイレへと繋がる入り口からひょこっと大島が顔を出した。
「な、何か見えた?」
すると大島は無言で首を振ってもう一度入り口から中を覗く。
「な、なぁ大島が恐くないのは分かったから。な?もう帰ろうな?」
恐くないの辺りで大島が怒ると思ったがそれは違い、何も思わせない無表情でこちらを向いた。
「そうですね、幽霊なんていないんですね。ええ。」
何かを肯定してゆっくり元来た道を戻り始める。
「急にそんな事言われても」
何も無かった時の言い訳だと思い、苦笑いで僕は大島の隣に並ぶ。
「まぁそれだけど、ね?非常識な物なんて無いんだよ。」
改めてそう思い。腕組みをしてそうつぶやく。
そうこの世に非常識な事なんて無いんだ。例えば奇跡だって。
「…奇跡だってこの世は起こらないのさ。」
気が付けば口に出ていて、聞かれたと思ったが、全く同じタイミングで何かがこちらへ走ってくる足音で掻き消された。
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