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「そーいえば」
トイレ前で出会った後ついてくると言うので同行を開始。途中思い出した様に彼女が手を叩いた。因みに大島はまだあうあう状態。
「何かな?」
「あんたさ、奇跡がどうこうって言ってたじゃない。信じないーって」
少し聞かれたくなかった言葉に少し詰まった。それを見て見事なしかめっ面だねーと笑われた。
その顔を見られたく無かったので上にある吹き抜けから見える満月を見上げて答える。
「ま、まぁあんな物非常識の塊だしね。根本的な所までは無いけど。例えばいくつかの───」
「奇跡はあるよ」
手を使い詳しく説明する途中。さっきまで笑っていた彼女が会話を遮った。
何も感じさせない無表情で否定を圧倒的に肯定させた。
「奇跡は、ある」
もう一度強くそう言うと、いつの間にか止まっていた僕たちの数歩前まで行ってさっきとは逆に微笑んで後ろで手を組む。
「じゃないと私、さ」
そこで一度口をつぐんでまた微笑み直す。そして僕の後ろにある何かを指さした。
それにつられて見る、後ろには薄暗く使われなくなった椅子が積み上げられているだけだった。
『今ここにはいないから』
と不意に前からでは無く、はっきりと僕の頭の中で彼女の声が響いた。
「「!」」
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