12.終わりの章

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カルピスちゃんはちょっと笑って、僕に背を向けた。 「今日はお友達に会いに行くってこと?」 「そうそう。昔の友達にね」 「渋谷に友達いるんだね」 「それはあんまり失礼じゃないか」 僕は苦笑する。 でもそうだ、梓がいなければ、僕は友達がなんなのか知りもせずに生きていったに違いないんだ。 それってとてもすごいことのような気がする。たったひとり、かかわらなかっただけで、人生が大きく変わっていたかもしれない、なんて。 「あのさあ、渋谷」 「はいはい」 「本気で私と結婚したいの?私が若くてかわいいから?」 「本当にかわいい子は自分でそんなこと言わないんだよ」 僕はあきれてしまう。カルピスちゃんは背を向けたまま、何気ない口調で続ける。 「いろいろ考えたけどんだけどね、まあそれもいいかなって思ったりするの」 「僕と結婚するってこと?君って本当にひねくれた言い方するよね」
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