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――おい、きなこ。おいって。
誰?うるさいなぁ。私は眠いのにぃ。あーやだ。私は、声から逃れるように身をよじる。
「おいっ。バイト遅刻するぞ!」
「わぁっ」
私は飛び起きた。覗き込んでたらしい気宇(きう)と額をぶつけ合う。あまりの痛みに目の前に星が散り、私は再びベッドに転がった。
「いってぇ!きなこ!なにしてんだよ!」
「うっさい馬鹿!なんよもう!」
額をさすりつつ起き上がる。気宇も額を押さえて涙目になっている。ちょっと可愛いって成人男性相手に思う。
「きなこ!おまえバイトだろ!?」
「ええっ、あう!何時?!」
「4時過ぎだよ!」
「やっば!なんで起こしてくれないの!」
って、今起こしてくれてたよねー。ああもう。私はベッドからおりて、お風呂場に向かう。顔を洗わなきゃ。この狭いマンションには、洗面所なんてものはない。
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