1.カミングアウト

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. ――おい、きなこ。おいって。 誰?うるさいなぁ。私は眠いのにぃ。あーやだ。私は、声から逃れるように身をよじる。 「おいっ。バイト遅刻するぞ!」 「わぁっ」 私は飛び起きた。覗き込んでたらしい気宇(きう)と額をぶつけ合う。あまりの痛みに目の前に星が散り、私は再びベッドに転がった。 「いってぇ!きなこ!なにしてんだよ!」 「うっさい馬鹿!なんよもう!」 額をさすりつつ起き上がる。気宇も額を押さえて涙目になっている。ちょっと可愛いって成人男性相手に思う。 「きなこ!おまえバイトだろ!?」 「ええっ、あう!何時?!」 「4時過ぎだよ!」 「やっば!なんで起こしてくれないの!」 って、今起こしてくれてたよねー。ああもう。私はベッドからおりて、お風呂場に向かう。顔を洗わなきゃ。この狭いマンションには、洗面所なんてものはない。
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