12.終わりの章

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「悪い?だって、おかしい気がして」 「なにが」 「私もあんたも、佐野さんが好きなのになって」 僕は小さく笑った。 カルピスちゃんは気づかなかったみたいだ。 「おんなじ人を好きってことは、価値観が合うってことだから、いいんじゃないかな。でもそこはカルピスちゃん次第だよ」 「……もうちょっと、考える」 「うん、そうして」 僕はまた少し笑った。やっぱりカルピスちゃんは気がつかない。 傷のなめあい。 それは悪いことじゃないと思うんだ。 結婚って形にも別にこだわらない。ただ、周りに認めてもらうための手段でしかないんだ、入籍なんて。 それでも、僕のお母さんとお父さんは、入籍したかっただろうから……そう思ったら、やっぱり、ちょっと、結婚って形式をとりたいなって思ったりする。 僕もカルピスちゃんも、佐野や気宇ほどは強くなれないだろうから、一緒にいることに意味があるような、気がするんだ。それはきっとこじつけで、もしかしたら僕は誰でもいいから隣にいてほしいだけなのかもしれないけど。 でもそれが愛じゃないなんて言う奴は、きっと間抜けだと思う。そんなことは他人がきめることじゃない。
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