1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「いやー、おひさしぶりです、レイリーさん」
私と会うやいなや、愛嬌のあるさわやかな声で彼は語りかけてきた。
私はとりあえず彼をテーブルに招いた。
彼の名前はキャロル。
異常に長い髪と、年中黒の帽子とロングコートという怪しげな出で立ちは、まったく現代人らしくないのだが、彼は人間ではないので問題はなさそうだ。
彼は、吸血鬼だ。
見た目では20代半ばの若者に見える(といっても目が隠れていて分かりにくい)が、実際はもう300年近く生きているとか。
普段は自由気ままにギターをかき鳴らし、好きなように思いついた言葉を歌っているらしい。
とかいう私も吸血鬼で。
彼が呼んでいたとおり、名前はレイリー。一応、元没落貴族。
死んだのが三十路過ぎなので、外見的にはキャロルより老けているが、実年齢は200歳とかそこら。
部下にワケありな生き死人やらなんやらを雇って、自分はもっぱら屋敷に引きこもって暮らしている。
吸血鬼の友人は少ない。その少ないうちの一人が、今日訪ねてきたキャロルだ。
「何か飲む?」
彼に飲み物を勧める。
「君は今も人間の食べ物を口にしているんですねぇ」
「だって、おいしいじゃん。ていうか、キャロルくんもでしょ?」
「それはまあその通り。じゃ、赤いワインを一杯くださいな」
「君は本当によく飲むよねえ」
私は棚のワイン瓶とグラス2つを取り、ワインを注いだ。
「それじゃ、二人の再会に、かんぱーい」
「かんぱーい」
彼の号令に合わせて、私たちはグラスをかつんとぶつけた。
最初のコメントを投稿しよう!