前置き~お泊まり会~

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「いやー、おひさしぶりです、レイリーさん」 私と会うやいなや、愛嬌のあるさわやかな声で彼は語りかけてきた。 私はとりあえず彼をテーブルに招いた。 彼の名前はキャロル。 異常に長い髪と、年中黒の帽子とロングコートという怪しげな出で立ちは、まったく現代人らしくないのだが、彼は人間ではないので問題はなさそうだ。 彼は、吸血鬼だ。 見た目では20代半ばの若者に見える(といっても目が隠れていて分かりにくい)が、実際はもう300年近く生きているとか。 普段は自由気ままにギターをかき鳴らし、好きなように思いついた言葉を歌っているらしい。 とかいう私も吸血鬼で。 彼が呼んでいたとおり、名前はレイリー。一応、元没落貴族。 死んだのが三十路過ぎなので、外見的にはキャロルより老けているが、実年齢は200歳とかそこら。 部下にワケありな生き死人やらなんやらを雇って、自分はもっぱら屋敷に引きこもって暮らしている。 吸血鬼の友人は少ない。その少ないうちの一人が、今日訪ねてきたキャロルだ。 「何か飲む?」 彼に飲み物を勧める。 「君は今も人間の食べ物を口にしているんですねぇ」 「だって、おいしいじゃん。ていうか、キャロルくんもでしょ?」 「それはまあその通り。じゃ、赤いワインを一杯くださいな」 「君は本当によく飲むよねえ」 私は棚のワイン瓶とグラス2つを取り、ワインを注いだ。 「それじゃ、二人の再会に、かんぱーい」 「かんぱーい」 彼の号令に合わせて、私たちはグラスをかつんとぶつけた。
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