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キャロルは、しばらくうちに滞在するつもりらしい。
理由は、本人曰く「近くに寄ったことだし、ふかふかのベッドで眠りたかった」から。
私も別に困る理由はないし、むしろ色々話をしたいので、長く滞在してくれた方がうれしいくらいだ。
夜。
月がきれいだったので、二人でベランダにでた。
グラスを片手に、四方山の話に花を咲かせる。
「そうだ、レイリーさん、今回もまた、いろいろと話の種を仕入れてきていますよ」
キャロルが言った。
欧州の至る所を時間に縛られることなく気ままにさまよっているキャロルは、よく"話"を仕入れてくる。
知り合いの吸血鬼に聞いたものから、酒場でたまたま隣の人間が話していたのを小耳に挟んだものまで。
その大半がくだらない話だった。
でも、私はそのくだらない話が好きだ。
「どんな話?教えて」
子どもの頃、寝る前に乳母にお話をねだった時のような心持ちで、彼に尋ねた。
「もちろん!じゃあ、いくつもあるんで、毎晩一つずつお話ししていきましょうかねえ」
彼は、にやっと笑った。
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