小さな国の小さな話

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 サトルはサイトからログアウトすると、パソコンの電源を切った。    パソコンの横に置いてあるタバコを1本取り出し、火を点ける。  ZIPPOの金属音が静かな部屋に響いた。   タバコをくわえたまま、部屋の窓をあけ夜風を室内に入れた。  タバコの煙と一緒に、外からの雑音も入ってくる。  サトルの眼に映るネオンは眩しかった。  眩しさゆえに、その下を通る人たちの影は濃い。    この濃い暗闇から抜け出したいと思う人間は、いったいどれほどいるのだろうか。  サトルはゆっくりと吐き出したタバコの煙を眺めながら、気づいていた。    自分も、この小さな国の住人だという事を。  そしてまた、ここから抜け出したいと思う自分がいる事も。
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