小さな国の小さな話

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「夜中に、何度も携帯に着信があるんです。相手は主人からなのに、出ると切れる。それが何度も……」  不安を文面で演じるサトル。  いや『カヨ』だ。 「それってもしかして……」  その内容に、単純に食い付いてくるマサヨシ。 「……やはり、そうでしょうか?……何だか涙が出そうです」 「……出来る事なら……側に行って慰めてあげたいです」  来た。 「……来て……会ってもらえますか?」  返事は、サトルが文章を入力するタイミングと同じくらいの早さで迷いも無く来た。 「勿論です。いつなら会えますか?」 「では……」  サトル、いや『カヨ』になりすましたサトルは日時と場所を指定し、会う約束を取り付けた。  実際に向かわせる女の顔写真を添付して。 「会える日を楽しみにしています」  マサヨシからの返事は、嬉しさでいっぱいの文面だった。  マサヨシの添付してきた画像は、冴えないオヤジだった。  こんな出会い系に食いついてくるくらいの人間だ。見た目も大したことが無くて当然だ。  騙されていることにも気付かないなんて。  馬鹿なオヤジだ。
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