逆さま

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「みてください」  若い女が見台の前に腰を降ろした。 「なに? 新しい恋人が出来た? 行く末を占って欲しいだと? この、くそ暑い日に、そんな暑苦しい相談話を。バカたれっ! そんな尻軽女の将来などオイラの……いや、私の知ったことか! 自分から不幸になる原因を作っておいて、占って欲しいなどとは笑止千万! 聞いて呆れる。よおし、はっきり言ってやろう。お前さんは一生、不幸だ。断言してやる。次々と男を手玉にとって、それが魅力的な女の宿命だなどとは勘違いも甚だしい。色狂いの女が、よくも新しい出逢いだなどと臆面もなく言えたもんだ! あーっ胸くそ悪い。実に不愉快だ。見料は要らねえっ! 悪いが塩を撒くから、そこをどいてくれっ!」 「な、なによっ! 変な人ね。それでも占い師なの?」  女は呆れ顔で去った。 「晋ちゃん、店番を済まなかった。客は来んかったろうね?」 「あっ、青雲先生。いえね、今、小生意気なキャバ嬢が、付き合ってる恋人と別れて新しい出逢いがどうのなんぞとヌカしやがったんで、こんこんと人の道を」 「こらこら。晋ちゃん、自分がキャバ嬢に振られたからと言って八つ当たりはいかんぞ。それと……付け髭と付け眉毛が逆さまだ」 ―了―
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