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「どう来るか分かるか?」
真剣な眼差しでトランシーバーに語りかける恭介。しかし、その声が健太郎に届くことはなかった。
「目標確認。捕獲を開始する」
自らの魔法杖、アイシクルエッジをバトン回ししながら由真は恭介らに告げる。トランシーバーを握っていた恭介の手は、由真が放った魔法"ソードブレイカー"によって傷ついていた。無論、トランシーバーは粉々に破壊されている。
「へっ…まさか、水無月が直々に出向いてくれるなんてな」
腰に吊していたサーベルを抜きながら恭介は由真に言い放つ。怪我をしているにもかかわらず、痛みを感じる素振りを見せないのはさすがリーダーと言ったところだろう。
「恭介、ここは俺達がやる。だから先へ行ってくれないか」
アルベインと神威が前へ出ながら戦闘体制へと入っていく。対して、由真は全員を相手することに全く躊躇がないようすだった。
「いや、日生と裕一が行け。ここは予定通りにやろう」
「だが恭介!」
アルベインが躊躇するのは仕方ないことだった。今恭介達がいるのは上が開けた、女子寮へ続く庭。魔法戦を得意とする由真にとってフィールドを広く使えるのは、例え人数的に不利でも五分五分に出来る程大きいアドバンテージだった。
「大丈夫だ、こいつらならやれる」
しかし、それでも恭介は二人の勝利を信じてやまない。二人のコンビネーションを信頼してるからこそ、だが大丈夫にはあまり見えないのがアルベインの心情でもある。
「……………」
肝心の日生は無言だ。しかし、自分の武器であるデュエルクローはしっかり身につけている。
「日生もやる気なんだ。ここは任せようぜ」
恭介は日生を見ながら言う。日生は頭のリボンに結いつけた鈴をチリン、と鳴らしながら頷く。
「舞え、ソードブレイカー」
ぐちゃぐちゃ話している間に永唱を完了させた由真は放射状に氷で出来た刃を発射する。それを往人、アルベイン、神威がそれぞれの攻撃で当たるとまずい分だけたたき落とす。
「行くぞ!」
恭介の掛け声でアルベイン、往人、神威は走り出す。もちろん由真が逃がすはずはない。
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