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猫との意思疎通。
それが、日生に備わった特殊能力である。
ネコ科の生物であれば、日生はすべてと会話等の意思疎通や猫を自分への指揮下に置くことが可能だ。
さらに日生の飼う猫は恭介が気まぐれに拾ってきた、自然淘汰の中にいた猫なので身体能力は非常に高い。そのため、ある程度の遠距離型の人間なら対等に戦える。
「お前達は裕一を守ってろ」
端的な指示を猫に出した日生は、由真に意識を向ける。一筋縄ではいかないと判断した由真も、杖を握り直して気を引き締める。
「…………」
「…………」
「日生……」
しばらくの間、静寂が走る。気まぐれに待った木の葉がひらり、と舞い落ちた時両者が動く。
日生は由真に向かって突進、由真は刹那身構えてから日生の正拳突きを左にかわす。
「まだ甘い」
由真は攻撃を当てられずバランスを崩した日生の足を払い、転倒させる。
「まずは一人」
至近距離からの氷魔法。食らえば即脱落だが、日生はなんとか受け身を取って脱出したため直撃は避けた。
「レノン!ダビンチ!」
持ち直した刹那、日生は二匹の猫に突撃を命じる。茂みから飛び出した猫は、尾につけた小さな刃を振りかざしながら切り掛かる。
「小癪な…」
とは言うものの、難無くかわしていく由真。さすがに猫に攻撃することはせず、玄関屋根の上へ飛び上がった。
「ここなら、届かない」
降り立った瞬間に、魔法陣を展開して攻撃体制に入った。
「フレズベルグ・シリンダー」
由真は対象を氷牢に閉じ込めるフレズベルグ・シリンダーを唱える。
魔法陣からは、八本の巨大な氷柱が伸びて日生を完全に閉じ込めた。
「日生!」
逃げていれば逆に死にかねない攻撃。日生は分かっていたから敢えて捕まった。
(そもそも、きょーすけのせいだしな。後で蹴っとこう)
女の子である日生には女子風呂を覗く理由はない。むしろ止めるべきだったのだが、恭介にうまく乗せられただけの話であった。
とりわけ、そういうのがあったから日生は大人しく捕まったのである。
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