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Side teruyo
一騎が二人を相手に大立ち回りを演じている頃、輝夜と往人は一進一退の攻防を続けていた。
自身の体故に凄まじい身体能力を発揮できる往人、念動力によって攻撃の受け流し方を完全に理解できる輝夜。
端から見ても、その戦いに決着が着かないのは火を見るより明らかだった。
「ちっ…めんどくせぇな!」
身体強化による突きは常人のソレを遥かに上回る打突速度だ。しかし、その攻撃のタイミングを計れる輝夜は攻撃先に双剣を添えるだけでいいのだ。
ジッ
これで幾度目かのハルバードが双剣を擦る音が響く。簡単にやっているように見えるが、輝夜の額には珠のような汗が浮かんでいた。
(はぁ…はぁ…。この人やたら攻撃が速いから凌ぐのが大変。幾つか掠ったしさ)
輝夜の制服の所々が往人の放った攻撃で破けていた。どれも軽微なものばかりだが、攻撃を受ける度にその破け具合はひどくなっていた。
(くそっ、いい感じに破けてるじゃないか!後ちょっとでブラが……!)
対して往人が目的も忘れてこんないかがわしい理由で攻撃していたことには既に気づいているだろう。
(後少し、後少しで理性が負けて攻撃の隙が広がる。チャンスはそこだね)
チンッキインッ……ギャッ
上手いこと受け流しながら、輝夜は勝利の方程式を組み立てていく。
「こんのぉ!」
焦った往人が大振りの一撃で輝夜を狙う。テイクバックが大きいために、輝夜が接近する隙を作ってしまった。
「しまっ――」
「遅いよ」
迫りながら、双剣を旋回させる攻撃。攻防一体の攻撃は、往人の腕を完全に切り落とす。切り落とされた腕からは大量の血が噴出する。
(殺すくらいの気持ちで倒さないと、私は勝てない。…それに殺したところで往人は死なない)
往人が動きを止めたので、輝夜は距離を取り出方を伺う。
切り落とされた腕を見ながら、往人はため息をついた。
「まさか本気で切り落とすなんてな…。俺じゃなかったら死んでるぞ?」
切断された腕を元の位置へ持っていくと、綺麗に切断痕が消えていく。
「ゾンビって便利ね……」
なかば羨ましそうな目をしながら輝夜はその光景を見つめる。
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