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「その代わり、俺は日の下では生きていけない」
俺をこんなにした誰かのおかげでな、と接合した腕を軽く回しながら往人は続ける。
「それを差し引いても、往人は強いね。いくつかもらっちゃったし」
「だが、ほとんどをわかったかのようにかわされたら凹むぞ」
「ふぅん?いかがわしい目的で攻撃しかけてる癖に?」
「うっ」
往人は言葉につまった。まさか、一語一句言葉が筒抜けとは思っても見ないだろう。
「さておき、私じゃ倒しきれないね…。私に免じて退いてくれると嬉しいな」
そうは言いながらも、臨戦体制は崩さない。往人も引く気はあまりないようだ。
「だけど、恭介がやることなんでね。俺も引くわけにはいかないのさ」
往人はハルバードを突撃の体制で構えた。対する輝夜もやれやれといった感じで応じる。
「じゃあ、私がもう一度致命傷を与えたら私の勝ち、ってのは?」
「ああ、俺はお前が動けなくなったら俺の勝ちだな」
「決まりね」
輝夜は神経を研ぎ澄ます。その瞳は、往人をしっかりと捉えていた。
往人も、輝夜をしっかりと捉えている。
「はあぁぁぁ!」
先に動いたのは輝夜だった。僅かに右へ真っすぐ駆け、脇腹を狙って切り払う。
「ちぃ!」虚を取られた往人はカウンターを取るために、輝夜の長い方の剣を受けて蹴りを叩き込む。
輝夜はそれを短い方の剣で凌ぐと、大きく飛びのいた。反動でぐらついた往人は行動に若干の遅れが出てしまう。
(今だ!)
輝夜は踏み込み、駆けるように往人の懐に飛び込む。そして長い方の剣を突き上げた。
「くっ!」
「まだまだッ!」
だが輝夜を上回る反応速度で首だけでかわした往人。かわされた輝夜は完全に無防備になる。
好機と判断した往人はハルバードを手放し、伸びきった輝夜の腕を掴んで投げ飛ばす。
「えっ…きゃあ!」
ゾンビであるため、体のリミッターがない往人が人間の女の子を投げるのは造作もない。
大きく投げ飛ばされた輝夜だったが、しっかりと受け身を取り事なきをえた。
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